OPEN ACCESS WEEK 2012 インタビュー企画~リポジトリ編

インタビューに応えてくださったのは、農学部 生物環境学科 地域資源環境学講座の地頭薗隆准教授。
約1時間、リポジトリについてを始めとする様々なお話を伺いました。

 

資料の入手および提供の場としてのリポジトリ 

地頭薗先生は、鹿児島大学リポジトリに登録されているコンテンツ数が現職の先生方の中で一番多くていらっしゃいます *1
。リポジトリはよく利用されていますか? 

地頭薗先生: 自分の分野(砂防・水文学)では利用する雑誌は絞られます。国内誌のほか、鹿児島大学や他大学の演習林報告が掲載されているリポジトリもよく利用しています。現場で取ったデータを論文で発表するまでのプロセスについて説明しますと、現地では時系列データが10分ごとに常時記録されており、それが例えば20年分といったまとまった期間になると膨
大なデータ量になります。このデータを整理・解析し、他の人が利用できるような形にするわけですが、学会誌にはページ制限があります。そこで、ページ制限がさほど厳しくない、大学が刊行している演習林報告に、大量のデータを掲載します。このようにデータの整理の場として演習林報告を用いることは他大学でもよく行われており、他大学の研究者によるデータが欲し
い際にはその大学の演習林報告を見ます。以前は研究者同士で直接データのやり取りをしていましたが、現在はWeb上でデータの入手や提供ができるようになり、便利になりました。

データを集積されているのですね。 

地頭薗先生: 自分は土砂災害関係を専門としていますが、川の流量のように山から出てくる水のデータや、降雨量、気温、湿度等の気象データを取っています。土砂災害関係の専門家だけではなく、植物学を始め様々な分野の人々が、それらの
データを必要としていますので、整理したデータをリポジトリで公開していることを案内し、利用してもらっています。例えば、屋久島の観測データは他ではなかなか手に入らないため、環境省や他大学の研究者からも需要があります。

(リポジトリに登録されている地頭薗先生のコンテンツの利用統計を示しながら)毎年出されている気象報告はダウンロード
数も多いようです。学外からの利用も多いですね。リポジトリには「鹿児島大学農学部演習林研究報告」をPDF形式で登録
していますが、その元となった生データが欲しいという希望が寄せられることはありますか? 

地頭薗先生: リポジトリに登録されている報告を見た後に、そのような要望を直接メールで頂くこともありますね。その場合は、共同利用の手続きを踏んだ上で生データを提供しています。生データがあれば苦労せずにすぐに解析を行うことができますが、こちらが苦労して取ったデータですので、PDFデータを利用可能とすることと生データを利用可能とすることの間
には、ワンクッションを置く必要があると考えています。生データが欲しいと連絡して頂くことで、誰が使ったかを把握することができます。残念ながら必ずしもきちんと出典を明示する方ばかりではないものですから。

過去の記録の共有 

先生は地域防災教育研究センターの教員も兼務されていますが、地域防災教育研究センターでそのようなデータをデータベース
化する構想はあるのでしょうか? 

地頭薗先生: 現在検討中で、図書館にも相談をしたいと考えています。画像、現場のデータ、測量結果、過去のデータ、等多種多様なデータによるデータベースを構想しています。地域防災教育研究センターでは、自然災害だけではなく、心理学や医療系のような幅広い分野を範疇としていますので、これらの各種データをどのように整理してデータベース化すべきか検討しています。また、昨今では多くの大学にこのような防災センターが設置されてきているのですが、それらと横並びのデータベースではなく、鹿児島ならではの特色あるデータベースを作りたいと考えています。例えば、桜島は平成26年1月12日に大正3年の大噴火から100年を迎えますが、この節目に合わせて、内閣府中央防災会議も災害教訓の継承に関する専門調査会が桜島大正噴火分科会を設け、特任教員の岩松暉先生が取りまとめの主査として桜島に関する資料の収集をされています。
これらの資料を誰もが利用できるよう、桜島の事を網羅するようなデータベースを作るべく現在取り組まれています。

鹿児島を特色づけるものと言えば、屋久島や奄美大島のような離島も含まれるのでしょうか。 

地頭薗先生: そうですね。また、土砂災害が多いことも鹿児島の特徴の一つです。この研究室にも過去の災害の膨大な記録があります。来訪者には利用頂いていますが、眠っているデータも多数ありますので、これらを誰もがオンライン利用できるようになればと考えています。研究室で保存している資料には、災害について役所が調査し作成した報告書も含ま
れています。この報告書は、役所では公文書管理法の保存期間の関係で5年で廃棄されてしまいますが、これらの中には過去の災害の記録として保存しておきたいものも多数あり、大学に寄贈頂いたものについてはすべて保存しています。
図書館にも保存されていないようなこれらの貴重な過去の報告書も、持っている人だけが利用できるのではなく、皆さんが使えるようにデータベース化できれば、と考えています。

自治体と共同の取り組みをされることが多いですね。 

地頭薗先生: 報告書のとりまとめの主体は自治体側であることもあれば大学側であることもあり様々です。自治体側でまとめた資料の場合、前述のように5年で廃棄されてしまうことが多いのですが、誰かがその重要性を認め廃棄されずに
保存されることもあります。しかし役所では人事異動があるため、例えば10年前の資料について問い合わせてもそれに対応できる人がいないということがしばしばです。しかも、刊行される資料よりも刊行されない資料の方がはるかに多いのです。防災施設を作る上での基礎データとして、現場の災害の実態についての調査資料が作られるのですが、施設
が完成すると、これらの資料はその目的は果たされたとして廃棄されてしまうのです。その一帯の環境調査である貴重なデータが残らないのは問題だと考えます。保存しておけば、将来またそこで災害が起こった際に、過去の地形はどうだったのか、といった比較が可能です。

データベース作成にぜひ図書館も協力させて下さい。 


文献の検索と利用形態について 

文献検索にはどのようなツールを使われていますか? 

地頭薗先生: インターネットで検索する場合はGoogleやCiNiiをよく使います。Googleからリポジトリにもリンクしていますね。

リポジトリに登録されているPDFにGoogle等から直接アクセスされることも多いです。文献を利用する際、紙媒体
より電子媒体によるやり取りが多くなりましたか? 

地頭薗先生: ほとんど電子媒体です、紙媒体による取り寄せは少なくなりました。最近各地で災害が多発しておりその調査に行くため出張が多いので、出先でもやり取りができる電子媒体がやはり便利です。

研究成果の発表のプロセスについて 

先生の研究成果の発表の場は、「鹿児島大学農学部演習林研究報告」のほかは、砂防学会の「砂防学会誌」が主でしょうか? 

地頭薗先生: そうですね。「砂防学会誌」は近刊の電子媒体での提供はしていませんが、60巻までのバックナンバーはJ-STAGEで無料公開しています。最近ではこのように、雑誌の刊行後一定期間をおいて無料公開する学会が増えてきました。
砂防学会の刊行物としては、毎年5月に開催される研究発表会についてもその概要集を1年後にWeb公開しています。
「砂防学会誌」は、まだ電子ジャーナル化していない *2 ことや、査読に時間を要することから、その内容は、早くて1年前、多くの場合は数年前の成果です。それに対して、研究発表会概要集では最新の研究成果を含んでおり、この概要集を見れば、
現在のトレンドが分かります。なお、概要集全体の流れというものがありますので、個々の論文を単発でリポジトリ登録してもあまり有用ではないのではと思います。

研究成果の発表の場を使い分けしていらっしゃいますか? 

地頭薗先生: 「砂防学会誌」に投稿する前段階の、データを整理するための場として学内誌
(「鹿児島大学農学部演習林研究報告」)を位置付けています。そこからさらに有益な成果について磨きをかけて学会誌へ発表しています。

教育の場としての紀要 

地頭薗先生: しかし、学内誌ならではの優れた点もあります。ページ数制限がないため、非常に詳しく書くことができるのです。学会誌ではページ数制限があるため、細かい方法について書くことができずプロセスを省略して結果について重点的に書きます。しかしその記述だけではどのように実験を行ったのかがわからないのです。
ですから、同じような研究を志している人は、方法が詳細かつ丁寧に書かれている演習林報告を見ると、それを真似しながら学ぶことができます。自分も若い頃、演習林報告を見ながら勉強しました。

学生さんへの指導の際にも利用できますね。 

地頭薗先生: 学会誌でプロセスの記述を省くのは、その分野の専門家なら知っていて当たり前の知識だ、という前提があるためですが、それは初学者はまだ知らないことです。ですから、自分が演習林報告に論文を書く際には、学生に学ばせるためにも丁寧にプロセスを記述するようにしています。


*1 https://kagoshima-u.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_snippet&all=&title=&creator=
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*2 英文誌 "International Journal of Erosion Control Engineering" は電子化されている。



インタビューを終えて 

 リポジトリや学内刊行物が担う多様な役割についてを始め、多発する災害とその調査・対応をめぐる様々なお話を伺うことができました。また、過去の記録の保存・集積・共有の重要さをあらためて感じました。ありがとうございました。
 ※この記事は2012年10月23日(火)に行ったインタビューを元に構成しました。
 

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