OPEN ACCESS WEEK 2011 インタビュー企画~文系編


インタビューに応えてくださったのは、桑原司先生(法文学部経済情報学科准教授)、久米村直人さん、田上雄一郎さん(共にM1(大学院人文社会科学研究科経済社会システム専攻))。ゼミの一コマをインタビューの時間にあてて下さいました。 



オープンアクセス:利用者として

桑原先生: リポジトリには自分の論文を登録したり、従来は図書館の相互利用サービスで取り寄せしていた他大学の論文も最近はリポジトリに登録されていることが多いので参照したりしています。自分はアメリカ社会学の歴史を専門にしており、1960-1980年代の日本の文献をよく参照しますが、Google Scholarで検索してみると、書誌情報はヒットするもののネット上での本文公開はされていないことが多いようです。日本の図書館に所蔵されている雑誌と、著作権が切れていると思われる国内外の図書が、リポジトリなどで本文公開されるようになったら嬉しいのですが。

国内の雑誌でよく使うタイトルは何ですか? 

桑原先生: よく使う国内学会誌は、「社会学評論」(日本社会学会)、「社会学史研究」(日本社会学史学会)、「社会学研究」(東北社会学研究会)、「社会学年報」(東北社会学会)。「社会学評論」(日本社会学会)はオンライン化する予定だと聞いていますが、フリーアクセスかどうかはわかりません。(流通量の少ない雑誌については)せめてどのような文献があるのか、という書誌情報だけでもインターネット上で公開されていたら助かります。ただ、紀要は売り物ではないので本文をインターネット上で無料公開しても収益上の問題は出ないのでしょうが、学会誌の場合は、本文をインターネット上で無料公開すると学会に入会しなくても刊行誌が読めることになり、会員数の減少・学会誌の売上部数減につながり、運営面から難しいのでしょうね。

学会によっては、刊行後一定期間を経てから無料公開するところもあります。 
桑原先生: 日本社会学会のように大きな学会の刊行物だと入手しやすいのですが、様々な大学の紀要は各大学にあまねく所蔵されているとは限らないし、欠号があったりもするので、紀要に関してはその発行元の大学がリポジトリ登録してもらえると研究者としてはありがたいです。

オープンアクセス:著者として 

桑原先生: 執筆者側から見たとき、紀要は微妙な位置づけにあります。公刊物だけれども各大学に寄贈される位でマーケットに出回るわけではないので、学術雑誌に比べてアクセスされる確率は高くありません、よって多少思い切ったことも書ける場なんです。ところがそれがリポジトリで公開されるようになると、どこからでもアクセスされうるので、書きづらくなる面ももしかしたらあるのかもしれません。執筆者側とすれば、公刊物はWeb上で公開されて当たり前だと、という意識で書かねばならないのでしょう。

お手元に先日制定された「鹿児島大学リポジトリに関する要項」を資料として用意しています。(久米村さん・田上さんのお二人は大学院生ですが)博士論文については原則登録を義務化し、修士論文の登録は著者の許諾制です。 

桑原先生: 要項でよいと思ったのは、修士論文を登録できることです。学会誌や紀要に単著論文を書くことが困難な場合でも、自信のある修士論文について公開できる場があるのは、学生の励みになると思います。
 また、現在は出版状況が厳しく、出版助成を得るなどしないとなかなか学術書を出版してもらえないのですが、文科系の場合、単著があるかどうかが研究者としてのランクに大きく関わってきます。例えば、鹿児島大学出版会を立ち上げ、冊子媒体とWeb媒体の2種類で出版できるようにし、リポジトリ内に設けた鹿児島大学出版会枠からWeb媒体を提供できるようになれば、若手がお金の心配をすることなく単著出版できる機会を作れるのではないでしょうか。

検索から入手まで 

学生さんからリポジトリはどのように思われているのでしょうか? 

久米村さん: あまり使わないです。学部生時代には存在も知りませんでした、案内や説明を受けた記憶がないのですが。
桑原先生: リポジトリのことを知らない学生の方が多いと思います、院生でもあまり知らないようです。

文献検索には何のツールを使われていますか?リポジトリのことを意識していなくても、CiNiiやGoogleから本文が見られるリポジトリへ実は導かれるようになっているのですが。 

久米村さん: CiNiiはあまり使いません。Googleをよく使います。ただ書誌情報だけで本文が見られないものが多いです。
田上さん: CiNiiは使ったことはありますが、書誌情報だけで本文はないものが多い印象でした。

Web上で本文までたどりつかない確率の方が高いですか?(電子ジャーナルを含め) 

桑原先生・久米村さん・田上さん: 高いです。

サービス・広報の評価 

桑原先生: リポジトリの画面までたどり着いても、その画面のどこをクリックすれば本文が読めるのかわからない、画面の見方がわからない人も結構いるようです。

画面がわかりにくいのですね。 

桑原先生: 図書館側でリポジトリの使い方について説明するパネルなどを学生の目に付くところに設置すれば、学生の利用も増えるのではないでしょうか。学生の利用が増えれば、学生の側から教員に対して、もっとリポジトリに論文を登録してほしい、という希望が出てきて、教員もそれに応えるようになるのでは。
久米村さん: 自分はパソコンの使い方を教える授業のTAをしていますが、1年生でもパソコンの使い方に習熟していない学生がいます。リポジトリの使い方も講習をした方がよいのではないでしょうか。また、同じことを説明するのでも、文字より映像を見せないと分からない人が多いので、操作と画面変遷について等、細かく説明する必要があると思います。
桑原先生: 人間は、文字を読んでから判断、でなく、目に入ってきた第一印象で判断する傾向がありますから、ヴィジュアル的な広報は重要です。アクセスするかどうかは身近に感じられるかどうかに影響され、身近に感じられるかどうかは、上手なPRが必要です。目に付きやすいところで広報するなどの必要があるでしょう。ちなみにポスターよりもパネル展示の方が目を引いてよく見られるようですね。
久米村さん:自分が学術情報基盤センターの生涯メールサービスを知ったのは、どこの掲示板にも大量に長期間広告が貼ってあったからです。リポジトリも長期間、複数箇所で掲示するなどの広報を行ってまずは言葉を覚えてもらえたら、説明会が開催されるなら行ってみよう、となるかもしれません。

習熟と質の向上とオープンアクセス 

桑原先生: 経済学科では大学4年生時の後期に、「特殊研究」という卒論とレポートとの間のようなものを書かせる授業があり、どの教員も担当しています。リポジトリの使い方に習熟していたら、目次の書き方や文献リストの使い方といった論文執筆の際の作法にも慣れるでしょうから、「特殊研究」の授業の際にも内容に集中して指導できるようになりますね。また、レベルの高い「特殊研究」が書ければ修士論文のレベルも高くなっていくでしょう、レベルの高い修士論文が書ければ本人も指導教員もそれを(リポジトリで)公開したい、となるでしょう。

後にリポジトリや図書館サービス等へのご希望を一言お願いします。 

田上さん: 使いやすくなることが一番です。



インタビューを終えて 
 オープンアクセスについてのお話はもちろん、サービスの在り方についても、ただ在るのではなく、ユーザを知ること、そして使いやすくすること、また届く広報をすることが大事だと再認識させられるインタビューとなりました。ありがとうございました。
 ※この記事は2011年10月14日(金)に行ったインタビューを元に構成しました。

参考 

補記 
 このほか、学内のコンピュータ端末への希望も寄せられました。
 学術情報基盤センターの端末で用意されているブラウザソフトは現在Internet ExplorerとMozilla Firefoxだけですが、Google検索との相性が良く便利なGoogle Chromeも使えるようにしてほしいそうです。
 

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