@phdthesis{oai:ir.kagoshima-u.ac.jp:00000779, author = {小原, 益己 and Obara, Masumi}, month = {2016-10-27, 2016-10-27}, note = {博士論文要旨, 博士論文全文, 結晶は半導体集積回路をはじめレーザや発光ダイオードなどの素子として,エレクトロニクスの製品や情報通信機器に広く用いられている。今後,情報化技術の多様化に伴い電子デバイスに要求される性能もまた多様化する傾向にある。その結果従来のエレクトロニクスの限界を超えた高性能,高機能化を可能にする新しい材料,新しい構造の結晶が求められている。新しい材料創製において,電子状態を制御することで結晶構造を変化させることが重要であるが,これまでの化合物材料は外殻電子の電子状態を変化させることにより化合物を形成して物性を変化させるというものであった。原子内において電子状態を変える手段に,電子励起と呼ばれる手法がある。励起状態はエネルギーにより様々な過程を経由して最終状態に到達する。しかし,励起を伴った反応場において電子の運動や電磁場がどのように結晶成長に影響しているのか明らかでない。これを,明らかにすることは,新しい材料の薄膜成長を制御することであり,新材料科学の発展に重要である。 本研究は,亜鉛(Zn)単一元素を用い室温環境下にて電子アシスト物理真空蒸着法により結晶表面近傍で原子や電子との相互作用が強い低エネルギー(240eV以下)の電子を照射して薄膜を作製した。成膜過程における結晶表面の電子状態の変動を電流値の変化として観測できる透過電子分光法を採用した。X線回折(XRD)の解析結果より成膜時の入射電子エネルギー10eV, 90eV, 100eV, 230eVにおいて非常に大きい散漫散乱が観測された。これらのエネルギーはZnの結合エネルギーに相当し,10eV=3d,90eV=3p,140eV=3sであり,100eVに関しては10eV+90eV(3d+3p),230eVに関しては90eV+140eV(3p+3s)の和に一致している。このことから,特定のエネルギーの電子照射により内殻の電子が励起されて電子密度分布に変化が生じたと考えられる。 そこで,本研究は内殻の電子励起を伴う入射電子エネルギー依存による量子力学的遷移メカニズムを結晶成長過程に取り入れ,内殻励起した長寿命のZnエキシマー(励起二量体)に関連した結晶構造が時間経過とともにどのような構造緩和をしていくのかを解析する。 XRD解析より,成膜から219日経過後の結晶学的特徴は,2つのローレンツ関数の合成からなる長距離秩序の相互作用が働いていることを示している。次に435日経過後の測定では,幅広い分布の散漫散乱は低波数側にシフトしランダムに分散した状態から秩序化する過程を示し,部分的秩序の一次元格子と完全無秩序の一次元格子構造の混在した形へと変化した。低波数側(k<0.4Å)で観測された3つのピークは一次元合金モデルに位相シフトを取り入れたモデルで近似できた。成膜から3年経過後の散漫散乱ピークは完全に消滅し,基底状態の六方晶系Znの結晶とFCC構造の格子定数a=4.07Åの新しい結晶構造に緩和した。Zn単原子で成膜したサンプルから六方晶最密構造以外の結晶構造は考えにくい。そのためFCC構造を構成している原子はZnエキシマーの存在が深く関与している。格子定数a=4.07ÅのFCC構造より炭素原子との結合がZnエキシマーの励起状態を長寿命化するのに深く関与していることが明らかになった。 本研究は,室温環境下にてZn薄膜の成膜過程において特定の低エネルギー電子照射を行うことで,内殻の電子励起によりZnエキシマーが生成され,その寿命が長寿命化するメカニズムにより、電子という極めてシンプルなものの作用で結晶構造制御を可能とし,将来の新材料の開発に有望である。 理工学研究科博士論文(工学) ; 学位取得日: 平成24年3月15日}, school = {鹿児島大学}, title = {内殻電子励起法により生成したZnエキシマー構造体の結晶学的特徴と構造緩和の研究}, year = {}, yomi = {オバラ, マスミ} }